タイで博士号を取得したリサーチ・アドミニストレーターのブログ

タイで博士号を取得したリサーチ・アドミニストレーターのブログです。これから、学術研究、教育、科学技術で国際連携などの道に進んでみたいなと志す大学・大学院生へ、自分らしい博士人材キャリアの”創り方”のヒントになるネタをお届けします。

【タイで博士号No.2_8】リサーチ・アドミニストレーターの原点

21世紀COEプログラム」に参加して学修したことのまとめです。21世紀COEプログラムというのは、2004年頃の第一次小泉内閣の時に始まった国際的に競争力がある世界的な研究教育拠点(大学院博士課程レベル)を作るための大学改革のプログラムです。当時は、まだ修士課程の学生でしたので実の背景的なことはよく分かっていませんでしたが、今思うと、このあたりから大学の研究環境が大きく変わっていくことになる節目だったのでしょうね。良くも悪くも、この大学行政と本学の方針の流れには乗って、タイ留学時代に知識と技術以外に知恵や実践知を学ぶ貴重な経験を積ませて頂きました。これが、リサーチ・アドミニストレーターの原点になっているものです。

 

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www.mext.go.jp

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我が国の大学が、世界のトップレベルの大学と伍していくためには、競争的環境を一層醸成し、国公私立大学を通じた大学間の競い合いがより活発に行われることが重要です。この一環として、第三者評価に基づく競争原理により、世界的な研究教育拠点(大学院博士課程レベル)の形成を重点的に支援し、国際競争力のある世界最高水準の大学づくりを推進するため、平成14年度より、「21世紀COEプログラム」(平成14年度予算額182億円)を実施しています。・・・・・・文部科学省高等教育局(平成1411月)

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2004年というのはどんな感じだったのかについては、何度もこの登場していますが下記のグラフを再掲。

 

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この平成14年度の第一期に、私が在学していた京都大学エネルギー科学研究科を主幹とした「環境調和型エネルギー研究教育拠点形成」も採択されました。環境調和型エネルギーシステムとしての太陽・水素・バイオエネルギーシステムを実現するための研究拠点,及びエネルギー・環境問題に関わる教育の高度化と国際化をめざした教育拠点を形成する。また,これらを推進するための国際環境調和型エネルギー 情報センターを設立する、というものです。この事業計画の中にあったのが、タイ・バンコクに海外拠点を設置するというものでした。そして、当時このプログラムの海外連携等を担当されていたのが、エネルギー理工学研究所の吉川暹先生という方で、後にプログラム全体のリーダーを務められます。タイ留学を決めてから、吉川研に居たタイ人の同級生に吉川先生を紹介して頂いてから、留学前後を含めて現在に至るまで大変お世話になっております。

 

そこで、吉川先生より任命を受けたのが「21COEバンコク調査研究員」という役割です。具体的な活動内容は多岐にわたり次の通りです。一人海外駐在員みたいなものですね。

 

21COEバンコク調査研究員の役割(活動内容)

バンコクスクンビットに開設したオフィスと郊外タンニャブリになるセンターの管理

京都大学21COEプログラムとタイ側パートナー大学(JGSEE, RMUTT)との連絡調整窓口

京都大学21COEプログラム関係者の来タイ時のアテンド

・タイ側パートナー大学(JGSEE, RMUTT)と合同シンポジウム、ワークショップ開催時の事務局スタッフ

・タイ及びアジア周辺国のエネルギー・環境分野の研究者とのネットワーキング支援

・タイ側パートナー大学の研究者との国際共同研究プロジェクト企画の調整支援 など

 

などなど、書き出してみるとかなりの業務量でした。これを受ける傍らで、博士号を取得するための研究も行っておりましたので、寝る間を惜しんでという感じではありましたね。

 

タイミング良く京都大学のこういうミッションを任せてもらえたというのは、タイ留学を頑張る精神の支えというか、承認というか、自信に繋がっていたと思います。特に、タイ留学ということに関しては以下のような志を掲げておりましたから、それが独りよがりではないというような確認できていたのだと思います。

 

持続可能な社会に向けてエネルギー環境問題など地球規模課題や地域共通課題の解決に向けて貢献できる人材になる

 

habumon.hatenablog.com

 

この取組を通じてのアウトプットをまとめると次の通りです。

 

アウトプット

京都大学環境調和型エネルギー交流拠点

・持続可能かエネルギーと環境の国際会議(Sustainable Energy and Environment International Conference: SEE International Conference) 計2回 開催 (2004 – 2007)

京都大学国際シンポジウム(21 COE:5拠点合同国際シンポジウム)(2007)

・エコーエネルギーと材料科学の国際シンポジウム(Eco-Energy and Material Science International Conference: EMSES International Conference) 計2回 開催(2004-2007)

・環境調和型エネルギー国際短期サマーコース

・SEE 2007宣言文(Expression of Intents: New Energy Initiatives)

・JGSEE Student Association (JGSEESA)

 

この時期は新しい交流を促進するための京都大学として新機能の導入試行(海外交流拠点)や、カウンターパートや学内他部署との合同シンポジウムの枠組みを構築して人と人の交流を促進するということが多かったです。

 

今やかましく言われているような有名雑誌へ国際共著論文ガー、とか被引用件数ガーとか普通に研究進捗を考えてすぐに出るわけないですよね。その代わり、新規で構築した国際シンポジウムの学会誌へタイやアジアの学生さん、研究者と京都大学の先生方との共著が出始めたり、シンポジウムを通じて面識が出来て京都大学の大学院へ留学したり、などにしっかり繋がりました。

 

次にアウトプットに応じてどのような波及効果(アウトカム)があったかまとめてみたいと思います。主に自分の学修に繋がったことをメインにしたいと思います。

 

アウトカム(波及効果)→特に自分へ

・アジア太平洋地域における持続可能なエネルギーと環境分野の研究者ネットワーク(人脈)の世話役というポジションを得られたこと(SEE Forumと言います)

京都大学の東南アジアを対象に教育研究活動を実施している多くの部局の教職員と人脈を形成できた。

・在タイ日本機関(日本大使館文部科学省から出向している人、日本学術振興会、他大学の拠点などなど)との人脈を形成できた。

・日本の大学事務文化と東南アジアの大学事務文化の間での実務的な調整能力の獲得

 

単純言うと、“人脈”異文化間の事務調整経験”の二つの獲得につながりました。この二つの自分自身へ対する波及効果が現在、京都大学でリサーチ・アドミニストレーションという専門的な仕事をする基盤になっていることは言うまでもありません。

 

あと、最近読んだ本で本学にもいらした中野剛志先生の「真説・企業論 ビジネススクールが教えない経営学 (講談社現代新書)」は、本質的なところを突いておられて、特にハイライト箇所などは大変共感を受けました。留学先の国や地域を問わずこれが本質的なんでしょうと思います。以下、アマゾンの紹介から引用:

 

真説・企業論 ビジネススクールが教えない経営学 (講談社現代新書

日本経済はなぜ長期停滞しているのか。起業の活力もイノベーションの条件も不足しているからなのか。通説を覆し本当の可能性を探る。

 

ベンチャー企業イノベーションについて本書で言及する5つの論点。

アメリカはベンチャー企業の天国ではない。アメリカの開業率はこの30年間で半減している。

アメリカのハイテク・ベンチャー企業を育てたのは、もっぱら政府の強力な軍事産業育成政策である。

イノベーションは、共同体的な組織や長期的に持続する人間関係から生まれる。

アメリカは新自由主義的改革による金融化・グローバル化が進んだ結果、生産性は鈍化し、画期的なイノベーションが起きなくなっている。

・日本はアメリカを模範とした「コーポレート・ガバナンス改革」を続けた結果、長期の停滞に陥っている。

これらの実態を知ったうえで、企業が目指すべき方向とは?

 

アマゾンの書評で最後「企業が目指す方向とは?」とありますので、こういう内容は学生のうちに早めに知っていると、学生時代(学部、修士、博士~)の期間を活用して何を得ておくと将来の自分の生産性やイノベーションにつなげることができるのか、ということのヒントになると思います。