タイで博士号を取得したリサーチ・アドミニストレーターのブログ

タイで博士号を取得したリサーチ・アドミニストレーターのブログです。これから、学術研究、教育、科学技術で国際連携などの道に進んでみたいなと志す大学・大学院生へ、自分らしい博士人材キャリアの”創り方”のヒントになるネタをお届けします。

【タイで博士号No.2_5】タイの稲わら、もみがら、とうもろこしの芯を調べてTop 1%論文ゲット!(その2)

 前回の記事で、タイがアジアの中で留学したい国ランキング2019でTop1に輝いたことを書きました。その記事の最後に、”タイの整った研究環境を選びタイの大学で一緒に切磋琢磨して、世界の研究者コミュニティへインパクトの高い研究成果を共に生産するっていうアドベンチャーに挑んでみたい、日本人の学生さん出てこないかなー”って書きました。

 

 2019年の現代で、こういうことを日本人の学生さんへ問いかけると一体どんな答えが返ってくるんだろう?? 2019年の現代でも、タイみたいな発展途上国ではそんなの出来っこないですよー。日本の先端的な装置がそろって研究資金が豊富な研究室じゃないと出来ないようー。などなど大変利口そうなお答えをされるのでしょうか? 一人ぐらい、そろそろチャレンジしてみたいという若者が出てきてもいいものですが、いまだかつてどこからもそんな声は聞こえてきませんね~。

 

・・というようにわざとらしく書いておりますが、今から10数年前のタイで、当該分野で世界の研究コミュニティへインパクトの高い研究成果を生産することができました!

 

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 今回は前々回の記事で紹介した論文に引き続き、タイでの研究成果をまとめた2本目の論文も、幸いにも”世界Top1 %論文”として、世界中のバイオマス熱分解研究分野の研究者、研究グループの先端的な研究の発展に貢献してますよということを紹介させて頂きます。1本目の論文がラッキーパンチで、たまたまということではなく、2本目の論文もちゃんと成果がでて、客観的にも評価を得ているのでマグレではないっていうことでしょう。いうなれば、日本人の多くが知らないだけで、タイの大学の研究環境で、研究者間、指導者との間柄、先輩後輩との協力関係の構築によりしっかりとした研究成果を生み出せるのです。

・・なんで間柄とか・・それはもちろん、今の先端的な研究成果を出したり、実験したりするうえでどれだけ多くの先人の知恵や努力、功績の下に立っているか、現在いる周りの見える方、見えない方の協力や支えの下で研究ができているか、、など、そういったことを全部ひっくるめた”間柄”によって気づけるとよいのですが。

habumon.hatenablog.com

 

habumon.hatenablog.com

世界で初めてバイオマスの熱分解反応へDAEM(分散活性化エネルギーモデル)を適応 

 2本目の論文は、最初に出した論文の稲わらとか、もみがら、とうもろこしの芯などいわゆる”バイオマス”という物質の熱分解の超基礎的な実験データのまとめに基づき、その反応を世界で初めてDistributed Activation Energy Model (DAEM)というモデルに当てはめたという成果になります。要するに、実験データを用いて数学モデルに当てはめて、バイオマスという材料にも適応できるということを証明したというものです。

 

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これがどうすごいのかは、いろいろ説明の余地がありますが、少し説明します。となると、ちょっとバイオマスというものの組成を少し説明する必要がでてきます。

 

バイオマスというのは、おおざっぱにいって木材とか植物とかになりますが、それらは概ねマクロ的には3つの構成物が混ざり合って構成されております。

です。もっと専門的には他に譲るとして、この3つで構成されてますということを知っていれば、少し賢くなった気分になると思います。世界中のバイオマスの熱分解反応というものを研究している研究者は、熱分解っちゅうのはどんなメカニズムでおこっているのかというのを調べたい気持ちにかられます。そこで、いろんな種類のバイオマスがあるので、それを一般化するために、この3つの構成要素(セルロース、ヘミセルロース、リグニン)がある一定の割合で混ざったものだと仮定して解析を行います。

 

例えば、とうもろこしの芯と稲わらの熱分解の進み方が異なるのは、セルロースとリグニンの配分が違うからではないかーとか。なんかそんなんを考えたりするわけです。

 

そうなったときに、感覚的に適当なことを言って、論文にするわけにはいかないので、より市民権を得ている数値モデルなどに当てはめて反応を説明しようします。

 

そこで、私たちの論文が発表されるまでは、世界中の研究者は単純に木材ももみ殻も、とうもろこしの芯も・・丸いセルロースとヘミセルロースとリグニンの球の混ざりものと単純化して、それぞれが温度によって順番に分解していくという(それぞれは相互作用はしません)という仮定をして説明をされてきていたというのが、当時までの流れでした。

 

それはちょっとあんまりにも単純化しすぎだようなーと、当時から疑っていたので、タイ人の指導教官の先生ともいろいろディスカッションをして、バイオマスの熱分解が単純に3つの物質の熱分解が並行で起こるのではなくて、温度に応じて無数の反応が同時に起こっているはずだ、という考えの下、すでに、石炭の熱分解モデルで証明されていたDistributed Activation Energy Model (DAEM)というのをバイオマスに当てはめてみました。というのが、この2本目の論文のざっくりした内容です。

 

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この論文は1本目を投稿して半年ぐらいあとにすぐに投稿したのですが、査読者の間でも議論があって、1年ぐらい査読に時間がかかったというものです。。(世界で初めて発表となったので、専門の査読者の中でも丁寧に審査していただいたのでしょう)

 

というようなこともあり、この論文も上の図のように、今でもよく皆さんに引用して頂いております。

  • 被引用件数:205件(自己引用を除く)
  • FWCI:8.31 (平均より多く引用して頂いている)
  • 被引用ベンチマーク: 99パーセンタイル(世界TOP 1%)

ちなみに、8月13日付で文科省から下記のような公表がでてますね。。。

 

日本の注目度の高い論文数(Top10%・Top1%補正論文数)の世界ランクは2000年代半ばより低下しています

www.mext.go.jp