タイで博士号を取得したリサーチ・アドミニストレーターのブログ

タイで博士号を取得したリサーチ・アドミニストレーターのブログです。これから、学術研究、教育、科学技術で国際連携などの道に進んでみたいなと志す大学・大学院生へ、自分らしい博士人材キャリアの”創り方”のヒントになるネタをお届けします。

【タイで博士号No.2_4】タイの稲わら、もみがら、とうもろこしの芯を調べてTop 1%論文ゲット!(その1)

サワッディーカップ!京都は37℃と蒸し暑い日が続いているようですね。中学校の社会で熱帯雨林気候と習ったタイ・バンコクは32℃で風も吹いて比較的過ごしやすい日を送っております。中学校の部活で夏休みの練習中に30℃を越えて日差しのきついグランドを走っていると、くらくらとしていて、熱帯雨林気候というのはさらに暑くて、じめじめしているんだろうなーと微かに思っていた記憶がありますが、30年ちかく経つと逆転する日も定期的に訪れるようになるとは・・・。この先どうなるんでしょうね~。

 

前回の【タイで博士号No.2_3】タイ原産の資源を有効活用してエネルギーと環境問題の解決に貢献で、博士研究の概要を少々、テクニカルなターム(熱分解:Pyrolysis)など織り交ぜながら紹介しました。(概要をご存じない方は前回分も↓↓) 

https://habumon.hatenablog.com/entry/2019/08/06/101935

 

博士論文でまとめた内容は、主に3つの国際ジャーナルに投稿した論文を軸に整理して一冊の本というか論文にまとめております。今回から、投稿した論文の概要とその後のインパクトについて紹介していきたいと思います。

 

何度でも強調しておきたいことは下記の2点です

 

  1. タイの大学院(JGSEE)で自然科学分野の基礎研究が可能であること

  2. タイの大学院(JGSEE)の研究環境でTop 1 %論文を生産できること

ちなみに、日本のようにありとあらゆる研究分野(自然科学といっても細分化されて、数えきれないくらいの分野がある)に対して、タイの大学院(JGSEE)でも一般的にすべての自然科学研究の分野で可能であるということではなく、戦略的に研究対象や方法を選べば可能である(可能であった)という点は補足です。

タイの稲わら、もみがら、とうもろこしの芯の熱分解特性を先端分析装置で調べる

英文タイトル:Pyrolysis behaviors of rice straw, rice husk, and corncob by TG-MS technique

和文タイトル:TG-MS技術を使った稲わら、もみがら、とうもろこしの芯の熱分解特性

 

というタイトルの論文を熱分解研究の歴史があって、世界中の研究者が先端の研究成果を発信したり参考にしているジャーナルである"Journal of Analytical and Applied Pyrolyisis"に指導教官のNakornさん(JGSEE)と、Nakornさんの恩師(京大卒)のWiwut先生の共著で2007年に投稿しました。(これが、幸いなことにインパクトが高く、Top 1 %ジャーナルとして世界中の研究者に読んでいただいております。

 

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 どんな研究か(実験をして、データを取得して、データを解析したのか)

 稲わら、もみがら、とうもろこしの芯を調べて何がうれしいですか~?という声も聞こえてきそうですが、農業廃棄物として捨てられていたりするものでも、所謂、再生可能な資源(≒自然のサイクルで1年、数か月単位で生産可能な資源)として付加価値を見出すことが可能となるかもしれない資源です。それが本当に可能かどうかを判断するためには、最終的な使用用途(燃料、化学品の原料など)を見据えたうえで、ボトルネックとなる基礎的な特性を詳細に、”丁寧に”調べて信頼性の高いデータを取得して、他の人がぱっと論文を読んで理解しやすいようなデータ解析と解釈を行うことが重要です。ちまたではやっている、エビデンスベースのうんぬんかんぬんのデータです。

 

下の図は本論文の①実験→②データ取得→データ解析(データの見える化)のフローを示したものです。実際の実験作業はすごく地味で、細かく、資料調整から再現性のあるデータ獲得まで地道に地道に行うものでした。(思い返すと、当時は実験に集中できる時間があったからできたんでしょう。集中、没頭できる時間は研究者にとって命ですね)

 

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ただ、実験の流れ自体は至ってシンプルです。簡単に言ってしまえば下記の3つの繰り返しで、同じ条件で5回ぐらい繰り返して、再現性を確かめて纏めるという具合です。

  1. 実験試料の準備(粉砕、ふるいで大きさ均一、乾燥)
  2. 熱重量測定ー質量分析装置にかける
  3. 数値データを処理してグラフをつくる

 

もう少しだけ詳しく説明すると、熱重量測定ー質量分析装置というTG-MSに粉末にした試料をかけると、室温(30℃~)から900℃まで窒素中で温度を上げていくなかで、固体粉末の質量が変化するか?それに伴い、どのような気体(水素、一酸化炭素二酸化炭素とか、水蒸気量も測定できる)が発生しているかを精密に調べることができます。

つまり、窒素中など酸素が無いなかで温度を上げる(加熱する)と固体が熱分解反応を起こし、その結果、固体の一部が気体となって外にとびだしていきます。同時に、固体内では炭化が起こって固い炭になっていくということが同時におきます。

 

これを、一つのグラフに表すと上の右端にある試料の熱分解挙動を示すグラフを作ることができます。

 

300℃ぐらいのところで重量がざーと下がっていくどうじに、H2O(水),CO(一酸化炭素)、CO2(二酸化炭素)などの山が見えますね。これがそれぞれの気体がその温度で発生しながら試料が分解されているということが分かります。

 

このグラフ一つで、とうもろこしの芯であれば、何℃ぐらいで熱処理すれば、どのような反応が起きて、どのような気体がどれぐらい生成されるかなどを予想することができるようになるわけですね。

 

実際のところ、このグラフ一つ作るには、かなりの職人芸がいるのですが・・。

内容については、ここまでとしておきます。専門的なことに関心がある方は、論文を参照してください。

 

 実験装置、材料、消耗品、資料、研究資金、マンパワーはすべてJGSEEが所有する資源を使った研究でした。

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論文のインパクトを調べる

次の、この論文の世界的な評価、つまりインパクトはどんなものでしょうか?Elsevier 社が提供しているSciValでインパクトを見てみるとしたの図のようになります。基本的には論文が他の研究者にどれだけ引用されているかということを見ています。

 

論文のインパクトは、良く指標で言われている代表的なものは二つぐらい(被引用)

  1. Field Weighted Cotatopm Impact
    ・類似の論文(同じ分野、出版時期、文献タイプ)と比較してどの程度引用されたかを示す
    ・平均値:1を上回る論文は、平均より多く引用されている
  2. 被引用ベンチマーク
    ・類似の論文(同じ分野、出版時期、文献タイプ)の集合におけるランクを示す。
    ・99パーセンタイルはトップレベルの論文で、世界の上位1%に入っている。

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これをみると、キーポイントとして

  • 244 被引用数 (自己引用を除外:238)
  • Field-Weighted citation Impact: 9.78
  • 被引用ベンチマーキング:99パーセンタイル

つまり、この論文は①自分たち以外の研究者の論文に238件に引用されていて、②類似の論文に比較して平均より多く引用されているうえに、③世界の上位1%に入っている論文であるという事となります。

 

上の折れ線グラフで2007年~2019年までの引用件数の推移も出ておりますが、コンスタントに毎年20件以上の論文で引用して頂いているということですね。

 

タイの大学院(JGSEE)の研究環境でタイの稲わら、もみがら、とうもろこしの芯の熱分解特性を調べた研究をしたら、世界Top 1 %論文につながったということでございます。

 

それで、なぜ、世界中のバイオマス、熱分解研究の皆さんに読んでいただいているか?ということを考えると、単純に言えば、バイオマスの基礎的な熱分解特性の評価の仕方データを丁寧にまとめた、ということに尽きるかと思います。

 

イノベーションばんざ~い、産学連携ばんざーい、短期主義ばんざーいと、叫んでおられるところもありますが、基礎研究というのは重要なんですよ、〇〇さん!